先にS君の質問の嵐について書きましたが、それを読み返しながらもう一人のS君を思い出しました。

 そのS君も質問の嵐を浴びせてきました。
 集会が続く日々のある昼休みに彼に呼び出され生徒会室で一対一で話し合ったというか、尋問を受けたというか、緊張の一瞬でした。

 もし流血事件が起きたとしたら、1969年の11月の13日か14日かだったでしょうね。加害者が彼、被害者が僕という訳です。

 彼が持っていたいかにもダサい学生鞄の中にはテープレコーダーが仕込まれており、同じくそこには包丁が隠されていたのですから。(ウオークマンが世に出るのはその10年後のこと)コードを垂らしてコンセントに指し、スイッチを入れておいて僕を呼び出したのでしょうか。そこのところは良く分かりません。

 幸い彼の尋問にクリアーし、カバンの中身を見せられた時には、人間不思議なものです。なんの感慨もなく、冷や汗が出るのでもないのですね。僕は生き延びて集会に戻ることになりました。