生涯で数回しか転勤しない人にとってはたいしたことには感じられないかもしれない。しかしマクロでみるとたいへんなことになる。県内で三千人が移動して一時間を履歴書書きに費やせば三千労働時間、一人が8時間250日働いても二千労働時間にしかならないことを考えればよい。

 手で書くことだけではない。間違いがないか照合する手間がかかる。年度が替わるたびに複本を本人に届けて記入回収する。それをファイルするとか収納するとかなどなど、相当の手間と時間とスペースがかけられる。想像しただけでも気の遠くなるようなコストをかけているのだ。

 A先生の場合、定年に近い年なので当然履歴書に書く事項が多い。一枚目の表に氏名や住所免許状などの基本的なことを書いて、裏には学歴を書く。そこからが履歴事項だ。これまで勤めてきた学校、昇給、給与に関わる役職など30年以上の経歴を書いていくと裏表で6面以上になる。

 B先生は子どもが3人いて、そのたびに産休や育児休業をとっている。それをいちいち書かなくてはならない。「女性のナントカカントカに関する法第何条と第何条により・・・」という決まり文句を書き込むのだ。これが長い。まるで嫌がらせのように長い文を子ども三人分について書き写す。

 C先生の場合は悲劇だ。彼女は子育てのために退職し、その後子どもが成長したので講師生活を送っている。講師には期間の短いものや長いものがあるので、いろいろな講師になったりやめたりするたびに記入事項が増えていく。また彼女の履歴書は採用のたびにコピーされ、保存されている。