教務主任はクラスごとのファイル作り続いて、「記入の要領」と「一覧表打ち出しサンプル」を作って、学期末の作業に入る前に説明して回った。すでに多くの教師がエクセルで下書きをしていたので、「ああ、このファイルに入れればいいんだね」といった程度の説明で十分だった。

いよいよ学期末である。教師たちは成績を集計し、所見を考えながら自分のクラスのファイルに成績を記入し始めた。ちなみに通知表には、評価と評定と所見、それから出欠などの記録が記入される。観点ごとの成績が評価であり、それを集計して教科ごとにくくったものが評定である。

山ちゃんは「校長さん、PC化でもいいし、手書きでも良いと言ったよね」と言いながら打ち出した一覧表を提出してきた。彼も教務主任作成のファイルに記入していたのだ。そこから彼は「手書き」にしていくつもりだった。それが許されるのかどうか確認したかった。

校長は「手書きでもいいよ、約束だから」と言いながら彼のクラスの「紙の一覧表」を受け取った。そして自分のパソコンから「通知表フォルダー」を開き、彼のクラスのファイルを開くと「お約束のボタンを押した」のだった。すると・・・

校長は裏切らない。手書きでも良いといった以上は手書きで結構だと思っている。時代の常識から考えて、プリントアウトされたものが奇異な感じを与えるとは思わないし、保護者に大きな反発があろうとも思っていない。ま、数件の異論は出るかも知らないがとは思っていたが。

「もちろん約束だから手書きでもいいよ」。そう言いながら、ファイルに設けられた「お約束のボタン」を押した。校長は内心「枚数は3枚くらいにしておこうか」と考えていた。