「平和で安全で豊かだ」と自分だけでも思いこむことができるようになると、未来が限りなく不安なものに感じられるのかもしれない。「満たされた今」の次には奈落の底が待っているかもしれず、世界が終わってしまうかも知れないと感じるからだ。

 未来を明るいものと考える時に人間は具体的にどんな行動をとるのだろう。貯蓄と出産である。
 戦争の後、飢饉の後に立ち上がった人々は明るい未来を夢に見る。貯蓄率が高まり、ベビーブームが起きるのは、どん底からの上昇を夢見るからだ。貯蓄は、豊かな未来を実現するものであり、出産は子が生きるにふさわしい明るい未来があるだろうとの希望が確信されるからだ。

 いまおれイズムのキリギリスには、貯蓄も子どもも、無駄な投資にしか思えないのだろう。イソップは間違っていた。冬を予感していたのはアリではなく、実はキリギリスだったのだ。